書籍の紹介です。
「天才と発達障害」 著:岡 南
講談社 第1版 2010.10.7 P296
著者 岡南氏は室内設計家。大同大学工学部非常勤講師。
著者自身が視覚優位、映像思考を認知の偏りを認める。
本書の内容は、宮尾益知氏との共同研究によるものと記述がある。
宮尾益知氏は国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科医長
第1章 あなたは視覚優位か、聴覚優位か
第2章 アントニオ・ガウディ「四次元の世界」
第3章 ルイス・キャロルが生きた「不思議の国」
発達障害というと、視覚優位で、聴覚刺激が苦手というイメージがありませんか。
本著では 認知の偏りが強い発達障害の子供達には、
視覚優位の子供達と、聴覚優位の子供達がいる。
しかし、どちらも同じ「アスペルガー症候群」と同じ診断名が付く。
そこで、教育現場では混乱をきたす。
視覚優位、聴覚優位それぞれに効果的な教育方法がとられるべきだと
そして、その特徴と配慮すべきことが述べられています。
何より、映像思考という認知に偏りのある著者自身の言葉であることに
重み、説得力を感じます。
第2章でのガウディの生い立ちから建築の特徴、
認知の特徴について記述は圧巻です。
幼年期にディスレクシア(読字障害)があったことから
ガウディの設計に関して、多くの資料を基に分析されています。
映像思考というのは、
視覚優位の中でも、奥行き感のある三次元に、
人の動きや太陽の動き(陰)などといった「動き」を意識できる場合には
時間軸が加わることとなり、四次元といった動く映像で思考ができる とあります。
そして、視覚優位とは相対する聴覚優位の例を
「不思議の国のアリス」の著者、ルイス・キャロスの
生い立ちから、彼の認知の偏り「相貌失認」(顔や表情を認知できない)に
ついての記述があります。
視覚優位、聴覚優位、映像思考について
具体例と深い分析が記述されています。
明日からの支援に即活用できるような、書籍ではありません。
視覚優位・聴覚優位について、安易に判断するのではなく、
細かな観察ができる基軸を持つことができる書籍です。
特に
ガウディの建築に惹かれる方、
ガウディの生き方に興味のある方には
実に興味深い書籍だと思います。
数年前から、ピアニストのグレン・グールドが
CDショップで取り上げられることが目立ってきました。
おそらく、坂本龍一氏がセレクトしたCDがきっかけでは。
私も、グレン・グールドに凝って(偏り)
しばらくグールドのCDを買っては、聴き込んでいました。
今でも、良く聴いています。
驚いたのは・・・何となく嬉しかったのは
本著のP5に
・・以前から発達障害の子どもたちにはどのような未来があるのだろうか、
と考えを巡らせていました。著名な例えばモーツアルト、エジソン、
チャーチル、アインシュタイン、グレングールドは
現代の診断基準で診察されたとことはありませんが、
彼らは発達障害として語られていました。・・・
えっ! グレン・グールド!
何で演奏に惹かれるのか・・。
一人のピアニストのCDをこれほど集めたことは今までに無く。
そのピアニストが発達障害とは・・。
そして、ガウディにしろ、グールドにしろ、
どうして、世界中の多くの人々を惹きつけてやまないのか。
そんなことを、いつまでも考えたくなる書籍でした。
本田 Eメール 2011年09月06日(火)11時07分 編集・削除
いつもまめにブログ更新、お疲れ様です。
そうですか、グルードも発達障害。人とは際立って異なる才能をもっている人は、きっと発達凸凹なのでしょうね。発達障害当事者のことを知るのによい方法の一つとして、当事者の書いた本を読むことが挙げられますね。所長も以前、アズ直子さんの紹介をされていましたが、テンプル・グランディン氏「我、自閉症に生まれて」(学研)、ドナ・ウィリアムズ氏「自閉症だったわたしへ」(新潮社)、ダニエル・タメット氏「僕には数字が風景に見える」(講談社)、ケネス・ホール氏「ぼくのアスペルガー症候群」(東京書籍)、ニキリンコ氏「自閉っ子、こういう風にできてます!」(花風社)、小道モコ氏「あたし研究」(クリエイツかもがわ)、あたりがお勧めですね。
みなさん特徴的なのが、一つの現象を、複数の感覚で感じていらっしゃること。音が色として感じられたり、温度であったり、数字が画像であったり・・・。
こういった方々のご本を読むと、「いったいわが子には、この世の中がどんな風に見えているのかしら・・・。」ととても不思議な気持ちになります。
以上